地域にもよって多少差がありますが、生後100日か120日の乳歯が生え始める頃に、お食い初めという行事があります。他にも、「歯固め」「箸ぞろえ」「箸始め」などと呼ぶ場合もあります。この時期の赤ちゃんはまだ実際には、離乳食すら食べられない状態ですが、『初めて母乳以外の食べ物』を用意し、食べさせる真似をする儀式です。
いったいお食い初めにはどんな意味があるのでしょうか?また実際に自宅などで行う場合、どのようにすればよいのでしょう? 今回はお食い初めの意味やマナーなどの一般的な事例について、詳しくご紹介します。
お食い初めは平安時代からあった!?
お食い初めの儀式は、平安時代に主に貴族の間で行われていた儀式が元になっていると言われています。現在のお食い初めは生後100日や120日で行われることが多いですが、当時は生後50日にあたる頃に「五十日の祝い(読み:いかのいわい)」として行われ、重湯の中に入れたお餅を、父親や外祖父などが箸を取って、赤ちゃんの口に少しだけ含ませるという儀式がありました。 その後、「五十日の祝い」が「百日」になり、鎌倉時代には、お餅の代わりに魚を用いるようになり、「真魚始め」と呼ばれるようになりました。色々な呼び名がありますが、今のように100日祝いの「お食い初め」と呼ばれるようになったのは、室町時代になってからだと言われています。
お食い初めの献立内容とその意味とは?
「お食い初め」には、地域によってさまざまな食材が用いられますが、いずれも縁起の良い意味合いのものが選ばれる傾向にあります。一般的なお食い初めの献立内容と、それぞれに込められた意味についてご紹介します。
◆ご飯(赤飯)
赤は、昔から魔除けの力や、厄払いの力があるとされる色です。お赤飯には、赤ちゃんが病気や災難にあうことなく、健やかに成長するようにという願いが込められていると言われています。
◆椀物(はまぐりの潮汁など)
はまぐりなどの二枚貝を使った汁物には、「将来、二枚貝のようにぴったり合う伴侶に出会えますように」という願いが込められています。
◆主菜(祝い鯛・・・尾頭付きの鯛)
鯛は、語呂合わせで「めでたい(鯛)」に通じる縁起物でもあり、魔除けの赤色と、身の白色から、「紅白」のおめでたい色合わせでもあることから、縁起物として祝い膳に欠かせない魚です。
◆副菜(煮物、紅白なますなど)・・・二種類
長寿を祈る海老や、先を見通せるという意味から蓮根などの吹き寄せや、精進料理でもある邪気を払うと言われている高野豆腐、あとはおせち料理などでもお馴染みの黒豆や紅白なます、タコ(多幸の意味や、足が八本あることから末広がりの八など)など、やはり縁起をかつぐ食材が使われています。
◆歯固め石
一汁三菜の他に、「歯固めの石」と呼ばれる小石を、小皿に載せてお膳に置きます。強い歯でしっかり食べ物を噛み、丈夫に育って欲しいという願いから、石に触れた箸で赤ちゃんの口に触れる「歯固め」という儀式で使います。
お食い初めの儀式の手順
①日取りや場所を決め、招待客がいる場合は招待をする
お食い初めは赤ちゃんの生後100日目に行なうのが一般的ですが、地域によってもばらつきがあり、あくまで目安です。細かい日数は気にせず、100日~120日前後で家族や招待する方の都合のいい日を選び、お祝いするといいでしょう。 なお、昔は食い初めに親戚や親しい知人などを招いていましたが、最近では両親や祖父母など家族だけで行なわれることがほとんどです。両親と赤ちゃんだけで祝うという形でも問題ありません。また、自宅で行うのではなく、レストランやホテル、料亭などの「お食い初め」の会食プランなどを利用する人もいます。
②お膳の準備をする(自宅の場合)
≪用意する物≫ 以下のものを準備します。
食器 → 正式には漆器の祝い膳を用います。男の子は全部が朱塗りの膳、女の子は外側が黒塗りで内側が朱塗りの漆器を使用します。最近ではベビー食器や、通常の食器でも代用するというご家庭も多いようです。
祝い箸 → 柳でつくられた、両端が細くなっているお箸のことで、縁起が良いとされています。通常の箸でも代用できます。
料理 → 一汁三菜。 お食い初めには、先ほどご紹介したような、赤飯や鯛の尾頭付きという大定番のメニューがありますが、絶対にそれでなければならないというルールはありません。各家庭で用意できる献立で楽しみましょう。まだまだ赤ちゃんも手がかかる時期で、お膳を揃えるのも大変だと思うので、作るのが大変な場合は、お食い初めセットをお取り寄せするという方法もありますよ。
歯固めの石 → 歯固めの儀式用の小石です。地域によっては必要です。お宮参りの神社や氏神でもらうか、川や海など水辺の小石を拾い、洗ってから使用します。
③養い親(食べさせる真似をする人)を決める
お食い初めでは、長寿にあやかるという意味から、「養い親」と呼ばれる、祖父母や親戚のなかの年長の人が、箸をとり食べさせる真似をします。男の子なら男性に、女の子なら女性に頼むとよいとされています。 現代では必ずしも「養い親」にこだわる必要はないので、ご家庭の都合で決めましょう。家族全員で順番に食べさせるというのも、よい記念になります。
④お食い初めの順番
お食い初め儀式の正式なやり方は、「ご飯、椀物、ご飯、魚、ご飯、椀物」の順番を三回繰り返し、食べさせる真似をします。
⑤歯固めの儀式
「歯固めの石」に箸をちょんと軽く当ててから、「石のように丈夫な歯が生えますように」という願いをこめ、そのお箸を赤ちゃんの歯茎に優しく、ちょんちょんと当ててあげましょう。石を直接赤ちゃんの歯茎に当てることは、誤飲の可能性があるので、やめておきましょう。
さいごに
お食い初めの儀式が終わったら、祝い膳は感謝の気持ちを込めて赤ちゃんの代わりに大人で頂きます。歯固めの儀式をした場合は、石は神社の境内へお返ししましょう。お食い初めの儀式は、必ずしも形式にこだわる必要はありません。大事なのは赤ちゃんの成長を願う気持ちなので、それぞれの料理に込められた願いや意味を大事にしながら、家族で食事を囲み、お食い初めを楽しんでくださいね。