生活保護というと不正受給のニュースが大きく取り上げられる傾向がありますが、不正受給の割合は保護費全体の1%に満たない程度で、そのなかには悪質ではないケースも含まれています。それに対し、本来は生活保護の受給資格があるのに利用していない方は80%もいるそうです。まだまだ、生活保護について詳しい制度を知らない方が多いようですね。
病気になったり失業したり、母子家庭になってしまったなど、ある日突然、不測の事態に見舞われてどん底の生活に陥ってしまったら、あなたはどうしますか?
そんなときに頼りになるのが、生活保護という国が生活を保障してくれる制度なのです。生活保護の受給条件はご存じですか? 今は大丈夫という方も、この機会に是非知っておきましょう。
受給の条件はたった3つ!
①援助してくれる身内、親類がいない
例えば、自分と生計を一緒にしている家族がいて、その人が働ける状態で、ある程度の収入があれば、本人に全く収入がなくても生活保護を受けることはできません。
生活保護を申請すると、役所が、親や兄弟など3親等以内の親類に対して「○○さんが生活保護を申請しましたが、あなたが援助することはできますか?」という問い合わせ(扶養照会と呼びます)を行います。もし援助ができるという人がいれば、生活保護は受けることができません。ただし、扶養を強制することはしないので、問い合わせを受けた身内や親類が「援助する余裕はない」など断ることはできます。「身内に迷惑がかかるかもしれないから申請はしないでおこう」と心配する必要はないですよ。
また、虐待やDVなどの事情で親族に居場所を知られると本人の身に危険が及びそうな場合など、特別な事情があれば、扶養照会を差し控えてもらうこともできます。
②まったく資産を持っていない。
もともと不動産や車がなく、生命保険の契約も、貯金もない状態であれば特に気にする必要はありません。
資産価値のある不動産(家族が住むための家は除外されますが、持ち家でも資産価値のある建物だと売却を勧められます)や車(車以外で交通機関がない地域や、通院や仕事で必要などの理由で所有を認められることはあります)は売却、生命保険は解約を勧められます。
貯金がある場合も、まずはそれらを生活費に充て、それらが無くなりそうになっても未だ生活の目処が立っていなければ、生活保護が受けられます。ちなみに、申請時に所有する全通帳の残高チェックがあるので、嘘はつけません。
③(病気・けが・高齢などで)働けないor収入が生活保護基準以下しかない
「働けない」については、なかなか証明が難しいため、受給資格があっても、認めてもらえないことも多いです。働くことができる人には働いてもらう、というのが生活保護の考え方なので、特に年齢が若く、重い病気もない場合などは、かなり受給は難しいでしょう。「働く気があって就職活動はしているけど、なかなか仕事が見つからない」という理由だけでは、窓口でも「もっと頑張りましょう」と言われて終わってしまうかもしれません。ハローワークなどでの就職活動の記録など、具体的な資料を持って行くことをおすすめします。
また、よく「働けない」=「収入が0」じゃないと受けられないと誤解されがちですが、働いていても給料が少なすぎたり、年金や手当があるけど生活するには少なすぎたりという場合、最低生活費以下しか収入がなければ、その足りない分を支給してもらうことができます。
申請はどこでするの? 申請後の流れは?
生活保護は、受給資格を満たしていても、申請しなければ受給することはできません。まずは地元の福祉事務所で、生活保護を申請したいという意思を伝えましょう。お住まいの地域の福祉事務所は、下記にご紹介する厚生労働省のサイトから調べることができます。ちなみに福祉事務所はたいてい市役所の中にあることが多いです。
決まった住居がない場合や、住民票のある場所と異なる地域に住んでいる場合も、現在地の最寄りの福祉事務所から申請可能です。
【生活保護と福祉一般:福祉事務所一覧】http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/fukusijimusyo-ichiran.html
申請書は窓口でもらえますが、特に決まった形式があるわけではないので、自作して用意していっても大丈夫です。自治体によって手順は異なりますが、だいたいは下記のような流れで申請後の手続きが行われます。
①申請
福祉事務所の窓口で、生活保護の申請書を提出します。
②面談・調査
申請日当日~数日以内に、面談や担当ケースワーカーによる家庭訪問、調査が行われます。面談では健康状態や生活状況、職歴などの聞き取りがおこなわれます。また、就業可能かどうかの調査、預貯金などの資産調査、援助が可能な家族・親族の調査(扶養照会)などもこの期間に行われます。また、他の制度や手当を受けることが可能かどうかも検討されます。
③決定
申請日から原則として2週間以内、延長される場合でも最長30日以内には、受給できるか却下かの決定が下されます。もし14日以上たっても連絡がなくて不安な場合は、担当者に決定の見通しを尋ねてみてもよいでしょう。また、もし決定の連絡を待っている間に手持ちの現金が底をついてしまった場合は、迷わずに担当者に相談して下さい。一時的な生活費を受給してもらえる生活福祉資金制度が利用できるかもしれません。
さいごに
不正受給防止のため、自治体や担当の職員によっては、簡単に生活保護を申請できないといった旨の話をされるケースもありますが、相手の話をしっかりと聞いた上で、どうしても申請したい旨を伝えてお願いする他ありません。あなたが今回ご紹介した条件を満たしているなら、決して諦めないでください。もしも窓口できちんと話を聞いてもらえるか不安な場合は、支援団体や法律家の協力を得るか、他の福祉関係の機関にまずは相談するなどして、一緒に同行してもらうとよいでしょう。